今、日本中で空き家が問題になっています。国や自治体は、空き家を減らそう!と掛け声だけは立派ですが、新築住宅・新築マンションへの対策は積極的なのに、中古物件の流通についてはあまり有効な対策が出てきません。
空き家が発生する原因が様々であり、素人の役人ではその本質が掴めていないからだと思います。
ではどういう原因で空き家が増えるのでしょうか?
なぜ空き家が増えるのか
社会構造
・マンションや分譲地の乱立などで、人口は減るが新築物件が増えています。
人は増えないので、当然、旧い家は放置されます。
・少子化で地方に残る子供が減っています。地方には仕事も無いので、都会へ住み着きます。
また、少子化で娘しかいない家庭の場合、夫の家に入る人が多く、結果、実家を引き継ぐ子が
いなくなります。
・産業廃棄物処分費の高騰で解体費全体が高くなりすぎています。更に2023年4月からアスベスト調査
が解体前に必須となり、調査でアスベストが発見された場合は、解体費が倍額になる場合も出てきま
した。解体だけで数百万円となる金額は、地方では土地値を大きく上回り、更地にして売れたとして
も大赤字になるケースが増えています。
また、コロナ対策に税金を使い過ぎ、空き家対策補助金が縮小になっていることも、
要因の一つでしょう。
税金
・居住用建物が有る場合、土地の固定資産税が1/3もしくは1/6に軽減されていますが、建物を解体
すると土地の固定資産税が3倍~6倍に跳ね上がります。地域によっては、5年間は土地の固定資産税
の軽減措置を継続してくれるところもあるので、活用したいところです。
・消費税も解体費に乗ってきます。10%はかなり厳しい。
・相続税対策としては、現金化するよりも不動産で持つ方が有利なため、親が老人ホームに入ったと
しても空き家のまま相続まで持ち続ける人もいます。
法律
・解体前にアスベスト調査が必須となり、旧く大きな物件ほど解体費が高騰しがちです。
・接道が無い、道路幅が少ないということで、再建築不可物件が多い。
特に地方では建築確認許可を取らずに建てられた物件も多く、一度解体したら二度と建物が
建てられない土地が多く存在します。
・建物を売却する場合、建物状況調査状況を重要事項説明書に記載することが義務付けられ、
雨漏りや 白蟻物件は現状のままでは売りにくくなりました。解体するにもリフォームするにも
お金はかかるので、売却を先延ばしにする方が多いです。
・空き家は値段が安い上に手間がかかるので、不動産屋が扱いたがりません。宅建業法には
報酬改定があり、400 万円以下の物件でも、税込み198,000 円が請求できることになりましたが、
売主からのみであり、買主側からは正規報酬しかもらえないので、状況はあまり変わりません。
・お金にならない空き家は、みな相続したがらず、登記簿の名義が変わっていない。
結局、相続権者が認知症になったり、代替わりを繰り返して、相続人がネズミ算式に膨れ上がり、
手が付けられない状態となります(いわゆる所有者不明土地)。
来年からは法律が改正され、必ず誰かの名義で相続登記を行うことになりました。
人間関係
・隣人との境界トラブルなどで、他人に売ることができないものもあります。
・自殺や殺人だけでなく、孤独死なども事故物件扱いされるようになり、なおさら売れにくい世の中
になりました。国土交通省がガイドラインを発表し、自然死については告知義務がないことを明記
しましたが、裁判になれば養護してくれないようなので、やはり全て告知したほうが良さそうです。
マンションの共用部分からの飛び降りなども告知義務がありませんが、やはりこれも気になる方が
おられるようですので、人が亡くなった物件は売りにくくなって空き家なるのが当然でしょうね。
空き家を持つことのデメリット
・浮浪者が住みついたり、心霊スポットになったり、放火や犯罪の温床となりやすい。
・台風などで壁などが飛んでいった場合、事故の原因となります。
・猫やイタチが住み着き繁殖します。糞や死骸の臭いで周辺住民に迷惑をかけます。
・人に危害を加える可能性のあるものは、特定空き家に認定され、解体せずとも土地の
固定資産税の軽減措置を剥奪されます。
・子孫に負の遺産を残すことになります。
実家を空き家にしないために
・親が生きているうちに、土地の境界確定は終わらせておきましょう。
これは、親の代であれば境界トラブルなども起こりにくいためです。
・境界も含め隣人トラブルがあるならば、早めに解決しておきましょう。
・予め解体の見積りだけは取っておき、将来、解体するときに備えておきましょう。
今時、田舎の40 年以上の中古戸建が、普通の中古戸建として売れるとは
思わないようにしてください。
・相続が発生したら、遺品整理や不用品処分だけは遺族ですぐやっておきましょう。
生活用品がぎっしりでは、売れるものも売れません。また解体費もかさみます。
・再建築不可物件については、そのような物件をワザと仕入れる業者もいます。
しかし、買い叩かれるので、建築ができる方法は本当にないのか、をプロの建築士や行政に
相談してみましょう。
・賃貸するということももちろん可能ではありますが、一戸建ては壁や地中の配管、電気配線、
浄化槽など、思いも寄らぬところで故障が起き、莫大な修理費がかかることがあります。
マンションなら賃貸すれば良いですが、あらゆる箇所でトラブルが起きやすい一戸建ては
売却したほうが余計なコストがかからないと思います。
空き家を持ち続けても、値上がりすることもなければ、いいお客が突然現れるわけではありま
せん。人に迷惑をかける前に、ある程度見切りをつけて、とにかく早く売却しましょう。