仏教宗派によるお墓の違い

一口にお墓といっても、仏教とキリスト教では当然形が異なりますし、同じ仏教の中でも宗派によって彫りこむ文字などが変わってきます。中でも親鸞が開祖となった浄土真宗(一向宗)は、日本で一番信者が多いにかかわらず、お墓には様々な制約があり、教えに厳格に従うと、自由な形や文字が作りにくいものです。
今回は、その浄土真宗と香川県出身の空海(弘法大師)が広めた真言宗について、簡単な説明とお墓の特徴をご紹介したいと思います。

日本の主な仏教宗派

まずはざっくりと日本の主な仏教宗派を一覧にしてみました。
実に様々ですが、日本にはほかに神道系やキリスト教系、天理教やPL教のような新興系もありますから、日本人は本当に信心深いですね。

分類宗派開祖
奈良仏教南都六宗(三論宗、成実宗、法相宗、倶舎宗、華厳宗、律宗)中国仏教の学派をそのまま受け継ぐ
密教真言宗空海(遣唐使で唐に渡り帰国)
法華経天台宗最澄(遣唐使で唐に渡り帰国)
鎌倉新仏教融通念仏宗良忍(浄土系)
 浄土宗法然(浄土系)
 臨済宗栄西(禅系)
 浄土真宗親鸞(浄土系)
 曹洞宗道元(禅系)
 日蓮宗日蓮(法華系)
 時宗一遍(浄土系)
主な仏教宗派一覧

香川県に信者の多い二大宗派

香川県には、真言宗善通寺派の総本山である善通寺(四国八十八カ所第75番札所)があり、真言宗の信者が多いとされます。
この善通寺は、和歌山県の高野山、京都府の東寺と共に弘法大師三大霊場に数えられ、真言宗の開祖である空海(弘法大師)が、讃岐国(香川県の前身)の今の善通寺市の出身ということで、全国から真言宗信者やお遍路さんが礼拝にやってきます。

また、日本の寺の26%を占める2万箇所の寺を持ち、信者も1200万人以上と日本一多い浄土真宗は、阿弥陀仏にすがり「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで極楽浄土に往生できる(他力本願)という、なんともお手軽で、大衆向けに分かりやすい教えがウケて、門徒拡大につながったとされています。
西本願寺派や東本願寺派をはじめ多くの派閥に分かれておりますが、霊魂の存在を否定するなどで、お墓参りはご先祖様の霊ではなく、阿弥陀仏に手を合わすという点では共通しています。

では、それぞれの教えを詳しく説明しましょう。

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真言宗

  • 弘法大師空海が開祖 → 密教(大日如来を本尊とする秘密の教え)を伝える。
  • 密教は言葉に寄らない教えであり、経典などで広く伝える顕教と対比。加地・祈祷を重んじる。
  • 総本山は高野山金剛峰寺。「即身成仏(現世において成仏する)」を最終目的とする。現実世界を肯定し、その中に絶対の世界を発見するという宗教観。
  • 平安後期、真言宗中興の祖覚鑁により、浄土と密教を融合させ「真言念仏」が開かれる。五輪塔の生みの親であり、お墓や追善供養の習慣を全国で広めた。
  • 御宝剛「南無大師遍照金剛を唱える。
  • 戒名に高僧や位の高い人には院号を付け、最後は居士(信士)・大姉(信女)で終わる。
  • 梵字(インドで使用される文字)を使用し、五輪塔にはそれぞれの部材ごとに梵字を付ける。
  • 追善供養のための卒塔婆を立てる。卒塔婆は五輪塔と同じく仏舎利を納めたストゥーパ

浄土真宗

  • 開祖は親鸞 浄土宗開祖の法然の弟子。
  • 阿弥陀如来を本尊とし、信心念仏で誰でも浄土に往生できるという考え。つまり遺族による追善供養を必要としない
  • 「他力本願」の本来の意味は、阿弥陀仏にすがり、すべての人々を仏に成らしめようということ。
  • 他宗派と比べ、タブーが多い。門徒もの知らずと揶揄されることも。
  • 卒塔婆供養をしない。戒名ではなく法名。院号などは付けず、霊位という文字も使用しない。仏壇に位牌を祀らない。五輪塔を建てない。水子地蔵を建てない。梵字を使用しない。霊標も建てない→法名碑。線香は立てずに横に寝かせる。
    など、他の宗派に比べるとかなり質素で控えめ
  • 正面文字には「南無阿弥陀仏」と彫り、建立日には吉日を使用しない。

まとめ

これは私個人の考えですが、今の時代、葬送の方法やお墓の形に必ずしもこだわる必要はないと思っています。故人や残された遺族が満足するならば、それが一番の供養になるでしょうし、浄土真宗のように霊魂を否定していても、やはり「ご先祖様が見守っていてくださる」を考えるのは、精神衛生上とても良いことだと思うからです。

最近の若いご住職は、世の中のそのような変化を感じとり、故人や遺族に寄り添ったアドバイスをする方が多いと見受けられますので、葬儀やお墓に関して、ご自分の意見を正直にお伝えしてみればいかがでしょうか。

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